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バイデン氏、撤収の正当性を強調する「米軍が戦うべきではない」

バイデン

※本稿は読売新聞オンラインの寄稿を一部編集・抜粋しています。

バイデン氏、アフガニスタンからの撤退を「後悔していない」

【ワシントン=横堀裕也】

アフガニスタンで親米民主政権が崩壊後、米国のバイデン大統領は16日、初めて国民向けに演説した。

ガニ政権崩壊が「想定よりも早かった」と見通しの甘さを認める一方、「米国の戦争を終わらせるための決断を後悔していない」と述べ、駐留米軍撤収の正当性を改めて強調した

バイデン氏はホワイトハウスでの演説で、イスラム主義勢力タリバンが予想以上のスピードで支配地域を拡大させたことに関し、「アフガンの指導者は諦めて国外に脱出し、政府軍は時に戦わずして崩れ落ちた」と批判した。

その上で、「アフガン軍自身が戦う意思のない戦争を、米軍が戦うべきではない」と訴えた

さらに、「戦略的競争の真の相手は中国とロシア」とも

バイデン氏は「戦略的競争の真の相手」として中国とロシアを名指しし、「両国は、米国がアフガンを安定させるため、無期限に多額の資金と資源を投じ続ける状況を何よりも好むだろう」と語り、米軍の駐留継続は「米国の国益に合致せず、米国民が求めているものでもない」と断じた

 一方で、トランプ前政権がタリバンと結んだ和平合意に基づき、米軍は5月1日までに撤収する取り決めだったと強調。

自身が駐留継続を選択すれば「タリバンとの戦いは激しさを増し、何千もの米兵が再び戦場に戻ることになっていた」と主張した。

また、「アフガンで起きていることを目撃するのは、特に帰還兵や外交官ら、アフガンを支援してきた人々にとって断腸の思いだろう」とも指摘し、「我々は引き続き外交努力を主導し、アフガンの人々への支援を継続していく」と述べた

米国とアフガニスタンの間で起こった出来事・情勢など

2001年10月: 9月11日の米同時多発テロを受け、ブッシュ米政権主導によるアフガニスタン空爆開始

2009年2月: アメリカはさらに兵士1万7000人の増派を決定。NATO加盟国もアフガニスタンへの増派などを約束

2009年12月: バラク・オバマ米大統領(当時)は、アフガニスタン駐留軍を3万人増員し、計10万人に拡大すると決定。一方で、2011年までに撤退を開始すると表明

2014年10月: アメリカとイギリスが、アフガニスタンでの戦闘作戦を終了

2015年3月: オバマ大統領が、駐留軍の撤退延期を発表。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領の要請を受けたもの

2015年10月: オバマ大統領が、2016年末までは兵士9800人をアフガニスタンに残すと述べた。これ以前は、1000人を残し全軍を撤退させると約束していた

2016年7月: オバマ大統領は「安全保障上の不安定な状態」を理由に、2017年には米兵8400人が駐留すると発表。NATOも駐留を継続することに合意したほか、2020年までアフガニスタン政府軍への資金援助を続けると強調した

2017年8月: ドナルド・トランプ大統領(当時)が、タリバンの勢力拡大を受けた増派表明

2019年9月: アメリカとタリバンの和平交渉が決裂

2020年2月: 数カ月におよぶ交渉の末、アメリカとタリバンがドーハで合意に至る。アメリカは駐留軍撤退を約束

2021年4月: ジョー・バイデン大統領、9月11日までに駐留米軍を完全撤退させると表明

5月: 米軍とNATO各国軍の撤退開始

5月: タリバン、南部ヘルマンド州でアフガニスタン軍へ大攻勢開始 

6月: タリバン、伝統的な地盤の南部ではなく、北部で攻撃開始

7月2日: カブール北郊にあるバグラム空軍基地から、米軍やNATO加盟各国軍の駐留部隊の撤収完了

7月21日: タリバンが半数の州を制圧と米軍幹部

8月6日: 南部ザランジの州都をタリバン制圧。タリバンが新たに州都を奪還するのは1年ぶり

8月13日:  第2の都市カンダハールを含め4州都がタリバン支配下に

8月14日: タリバン、北部の要衝マザーリシャリーフを制圧

8月15日: タリバン、東部の要衝ジャララバードを無抵抗で制圧。首都カブール掌握