複業解禁の企業も増え、働き方が多様化している昨今。
複業(副業)の仕事を見つけるためのマッチングサイトも数えきれないほどあり、ハードルは低くなっています。
とはいえ、「自分には強みもないし、お金に換えられるほどのスキルや資格を持っていないから複業はムリ」と諦めている人も少なくないのではないでしょうか。
数々の複業を経験し、『【スタンフォード式】世界一やさしい パラレルキャリアの育て方』著者の江端 浩人氏が、自分の「強み」や「やりたいこと」を見つけるためのヒントを紹介します。
※本稿は、東洋経済オンラインの寄稿を一部編集・抜粋しています。
複業には興味はあるけれど、自分には強みもないし、そもそもやりたいことがわからない……。
そう思っている人は多いかもしれません。
でも、大丈夫。強みも、やりたいことも、これからつくればいいのです。
これまではデジタル技術が進んでいなかったため、一度に多くの仕事をしようと思っても、限界がありました。
しかし今では、同じことを考えている人や賛同してくれる人とすぐつながれます。
力を合わせてスケール(規模拡大)しやすくなっているのです。
本業で忙しい人でも、専門知識・経験がない人でも、稼ぎやすくなっています。
知っているうえで「やらない」ならいいのですが、知らないまま「自分が活躍できる場所を増やしたいな」「将来不安だな」「もっと稼ぎたいな」と思っているなら、それは損でしかありません。
明日の働き方を変えるのは、自分の行動です。
ここでは、自分の「強み」や「やりたいこと」を見つけるためのいくつかのヒントをご紹介しましょう。
私がMBA取得のため留学したスタンフォード大学もそうでしたが、アメリカの大学では季節ごとに部活を変える「シーズン制」のルールになっています。
春には野球部がありますが、秋にはありません。代わりにサッカー部や陸上部、アメリカンフットボール部などができます。冬になるとレスリング部やバレーボール部などになります。
スポーツでプロを目指す人はクラブチームに入るのですが、部活では1つのことをずっと続けることはありません。多くの部活を体験すると、自分の適正がわかってきます。それによって「パラレル」な活動をすることに対する慣れができるのです。
これには「1つのことに集中しすぎない」という意味もありますし、「新しいことは1シーズン(3カ月)くらい続けてみて判断すべき」という意味もあります。
何度かやってみて「自分には合わない」と思うこともあるかもしれないので、とにかく1シーズンは続けてみる。
自分にそれが合っているかどうかを判断するにも、他者からの評価を見極めるにも、3カ月程度の期間を設けるのです。
逆に3カ月続けて、とても楽しいと感じたら、そのまま半年続けてもいいでしょう。
そして、同じことに挑戦している仲間の中で自分が上位30%に入っていれば、「得意なこと」と判断します。
「得意なもの」と判断したものの中でも「とくに得意だ」と感じたものは、トップ1割、あるいは5%に入るように頑張ってみるといいでしょう。
ただ、得意なものが見つかっても、新しいものに挑戦することを止めてはいけません。
得意なものはどんどんストックしていき、新しいものへの挑戦も継続するのです。
私の場合、インターネット上の趣味を多く持っており、つねに新しいものを試しています。
noteもやってみましたし、プログラミングにも挑戦しました。
陸上に「十種競技」があります。この選手はものすごく大変です。
100メートル走で100メートル選手と競争すれば勝てませんが、10種の競技をすべてできるからエリートと評価されています。
サッカーでもさまざまなポジションを経験していると「ユーティリティープレーヤー」といわれ、重宝されます。
人が足りないときには、呼ばれるようになるのです。
複業も同じです。ユーティリティープレーヤーのように複数の強みがあると、その分、舞い込んでくる仕事の幅が広がります。
一つを100%極めるのではなく、3つを70%できるようになることを目指しましょう。
何か新しいことを始めるとき、「できない理由」を並べる人は少なくありません。
複業にしても「時間がない」「2つのことを同時にやるのは無理」など、できない理由はいくらでも挙げることができます。
でも、そんなことを言っていては、いつまで経っても前に進めません。
そこで必要なのが、「どうすれば実現できるか」を考えること。
選択肢が複数あるときも同じです。
「Aにするか、Bにするか」と迷って、思考停止してしまう人がいます。
しかし、迷うなら「どちらか」ではなく「両方」やればいいのです。
日本では、いまだに1つのことに集中するのが美徳という考え方が残っています。
ですが、新しいことに挑戦することは、言い換えれば「好奇心を持つ」ということ。決してネガティブなものではありません。
「新しいことに挑戦するのは苦手!」という人も多いと思いますが、それは慣れの問題です。
例えば、新しく登場したサービスを積極的に使っていくと、「自分は新しいものは得意ではない」という既成概念から脱却できます。
「試してみた」ことが自信につながるからです。
とくに最近は変化が激しいため、ビジネスモデルも仕事も新しいものが次々出てきます。
少しずつでも、視野を広げて試していく習慣を身につけてください。
そうすれば、自分ができることの幅が広がりますし、「これは楽しい」と思えるものに出会うこともできます。
「新しいもの」を生み出すには、小さな成功をつかみ、それを積み重ねて仕組みをつくるのがおすすめです。
「70対20対10」の法則をご存じでしょうか。
これは、Google元会長兼CEOのエリック・シュミット氏がGoogleを成長させていく過程で用いたリソースの配分ルールです。
簡単にいえば、70%は「うまくいっていること」に、20%は今までの「改善」に、10%はまったく「新しいこと」に配分すると、うまくいくとの考え方です。
人も資源も時間も、この比率で配分します。
新しいことに挑戦すれば、当然、失敗することもあります。むしろ、失敗することのほうが多いでしょう。しかし、10%の枠の中であれば、失敗しても破綻するようなダメージは受けないので、恐れず挑戦ができます。
これは個人でも同じです。
自分の活動時間の10%を新しいことに配分してみてください。それが難しければ5%でもいいでしょう。
仮に1日の活動時間が16時間あるとして、10%なら96分、5%なら48分。
最初は難しく感じるかもしれませんが、続けているうちに成果を実感できるはずです。
もちろん、毎日違うことに挑戦しなければいけないわけではありません。
新しくブログに挑戦するなら、「毎日20分、ブログの記事を書く」でもいいのです。それを2、3カ月続けてください。
これまでの人生の中で経験のないこと、試したことのない切り口に挑戦するのです。
それは、仕事を派生させる形でも構いません。
例えば、ウェブマーケティングの仕事をしている人が、これまで扱ったことのない業界のマーケティングを違う切り口で試してみるのも新しいチャレンジです。
その過程では、「試してみたけれど、自分に合わない」と気づくこともありますが、むしろそれが重要です。
それに気づいたら次のことを始めればいいだけです。
だから、2カ月あるいは3カ月など、自分なりに期間を区切って挑戦するのがいいでしょう。
ここで注意点があります。
それは「少しだけ試してやめてしまう」こと。
やると決めたら、ある程度の期間を続けなければ、正しい判断はできないからです。
成果が出なくても気にすることはありません。
うまくいかないときは「成功しない法則を見つけた」と考えればいいのです。
私自身、新しいことに挑戦してうまくいかなかったことは山ほどあります。
例えばインスタグラム。
3カ月ほど続けてみましたが、自分は写真で表現するのは向いておらず、Facebookを使って文章で表現するほうが得意であることがわかりました。
仕事でも同じです。
毎日同じことを繰り返す仕事は、自分には合わないことに気づきました。
実際に伊藤忠商事に就職した当時、最初の2年間は配属された部や課の経理業務を任されました。
とても学びのある仕事でしたので一生懸命取り組みましたが、ずっと続けたいとは思えませんでした。
それよりも自分には、新規ビジネスを開拓するほうが合っていると実感しました。
ただそれは、部や課の経理業務を経験したからこそわかったことです。
やってみなければわかりません。
自分には合わないかもしれないと思っていても、一度は騙されたと思ってやってみることも重要です。
いかがでしょうか。今から新しいことを始めても遅くはありません。
マッチングサイトでは、「仕事」といっても、マーケティングやプログラミングといった高度な専門知識を求められるものだけではありません。
・人間関係の悩みを聞いてほしい
・SNSで使うプロフィール用の写真を撮ってほしい
・動画の切り抜きをしてほしい
・勉強が苦手な子どもに勉強を教えてほしい
といった意外なニーズもあります。
ぜひ、ご自分の適性を把握し、得意なことや好きなことを「強み」にして複業を楽しんでください。