エンタメ・芸能・youtube・SNSをまとめたメディアサイト!

「人助けランキング」、日本は最下位! 他人を信用しないことと低賃金の関係

「人助けランキング」、日本は最下位! 他人を信用しないことと低賃金の関係

※本稿は、ITmedia ビジネスオンラインの加谷珪一氏の寄稿を一部編集・抜粋しています。

なぜ日本人は他人を助けないのかを考える

人助けに関する国際ランキングで、日本が世界最下位になっている。

ネットでは「日本人は冷たい」「欧米による勝手なランキングだ」と、いつものように感情ムキ出しの議論となっているが、こうしたランキングは、各国のビジネスカルチャーとも密接に関係している。

結果について過剰反応するより、冷静に受け止めてうまく活用したほうがよい。

ただのランキングなのか、そうでないのか

このランキングは、英国のチャリティーズ・エイド・ファンデーションという団体が毎年、行っているもので、国ごとに「見知らぬ人を助けたか」「寄付をしたか」「ボランティアの時間を持ったか」という3項目でアンケートを実施し、その結果をまとめたものである。

この調査は2009年から行われており、19年に発表された10年間の総合ランキングでは日本は126カ国中107位、最新の21年のランキングでは何と114カ国中最下位となっている。

かつて、国際比較調査を実施するのは簡単なことではなかった。

近年はネットの普及で比較調査が容易になり、自国の立ち位置がよく見えるようになっている。

日本人はどういうわけかランキングが大好きで、データが発表されるたびに一喜一憂している(ランキングに対して声高に批判しているのも、ランキングを気にしている証拠だ)。

ランキングを気にするのは悪いことではないが、ただ感情的になっているだけでは意味がない。

しょせん、人間の評価など薄っぺらいものである。

仕事もそうだが、メキメキ成果を上げるビジネスパーソンは、周囲と自身を比較するのが上手であり、成果を出している人と自分を比較し、何が足りないのか冷静に分析している

そしてツベコベ言わず、足りない部分を純粋に補う努力をするので、あっという間に成果が上がる。

企業経営でもヨコの比較は非常に大事で(ベンチマーキングと呼ばれる)、複数項目でライバル企業との比較を行い、点数が少ないところを重点的に対処するのは、有能な経営者にとって常識である。

経営者といっても全員がソフトバンクグループの孫正義会長兼社長のような天才ではないので、一定の成果を上げている経営者の多くが、ベンチマーキングをうまく活用している。

つまり、こうしたランキングをツールとしてうまく使いこなせるかどうかで、国全体としても成果が変わってくるのだ。

ランキングの結果について「恣意(しい)的だ」と声高に批判している人をよく見かけるが、仮に評価項目が恣意的であっても、同じ基準で各国を比較しているわけだから、何らかの特徴が出てくるという点では何も変わらない。

その評価項目について感情的になるよりも、その結果が何を示しているのか分析し、応用したほうが得策である。

他人を信用できなければ現代社会では圧倒的に損をする

10年間の総合ランキングを見ると、何が足を引っ張っているのかはハッキリしている。

「ボランティアをしたか」の項目では46位、「寄付をしたか」の項目では64位なので、それほど悪い結果ではない。

一方、「見知らぬ他人を助けたか」が堂々の最下位となっており、これがランキング結果を引き下げた(ちなみに21年のランキングは、寄付とボランティアのランクも大きく下がり、これで全体ランキングが最下位になった)。

日本にもボランティア団体があるし、寄付を募る活動はそれなりに存在するので、活発とは言えないものの、寄付やボランティアにおいてある程度の順位になるのは当然だろう。

つまり、ランキングの結果は「日本人は見知らぬ他人をまったく助けない」という部分に集約されているのだ。

一連の話は、比較調査を見慣れている人にとって特段、驚くべき内容ではない。

日本人が他人を信用しない傾向が顕著であることは、すでに多くの調査結果が示しているからである。

例えば、総務省が18年に行った調査によると、「ほとんどの人は信用できる」と回答した日本人はわずか33.7%しかおらず、その割合は各国の半分しかなかった。

基本的に日本人は他人を信用しないので、他人と関わろうとしない人が多く、それが今回のランキング結果にも反映されている。

では他人を信用しないことは、私たちにとってメリットなのかというとそうではない。

なぜならば現代資本主義社会は、見知らぬ他人を信用することによって初めて成立するシステムだからである。
つまり、他人を信用できないと、資本主義社会において圧倒的に不利になってしまうのだ。

最終的には低賃金の元凶にもなっている

信用できない相手と取引する場合、当然のことながらリスクが生じる。

そのリスクを軽減するためには、多額の調査費用をかけて相手を調べたり、ガチガチの契約書を作成するといった作業が必要となり、時間とコストを浪費する。

これを回避するためには、よく知っている相手に絞って取引するしかない。

日本では、従来から付き合いのある相手としか取引しない企業がたくさんある。

系列と称して、資本関係のあるところからしか仕入れない企業も多い。

なぜそうなっているのかというと、見知らぬ相手と取引するコストを無意識的に回避しているからである。

人についても同じで、社内と社外を明確に区分けし、さらには正社員と非正規社員という形で、社内においても内と外を区分する傾向が顕著である。

一連の行動にはまったく同じメカニズムが働いている。

では、身内とだけ取引を続けることが低コストなのかというとそうではない。

内と外を分離する、いわゆる前近代的ムラ社会においては、十分な市場原理が働かず、結局は高いコストを支払う羽目になる

人の移動も制限されるので、人材の流動化が進まず、新しい技術やビジネスモデルに対応できない。

結果的に多くの日本企業は収益と賃金を犠牲にしている

日本企業の生産性が他国に比べて著しく低く、結果として低賃金になっていることは、すでに多くの人が認識していると思う

その理由の一つとして考えられるのが、この閉鎖的な商慣行である。

人助けランキングで最下位という結果は素直に受け止め、改善したほうが多くの日本人にとって有益だと思うがいかがだろうか。(加谷珪一)