※本稿は朝日新聞オンラインによる寄稿を一部編集・抜粋しています。
中央アジア・ウズベキスタンの約9千万年前の地層から見つかった化石が、新種の大型肉食恐竜のものとわかった。
白亜紀末期に陸上を支配したティラノサウルスが登場するまで、生態系の頂点にいたカルカロドントサウルスの仲間という。
筑波大や北海道大などの研究チームが「ウルグベグサウルス」と名付けた。
8日に英国王立協会のオンライン科学誌(https://doi.org/10.1098/rsos.210923)に発表した。
研究チームは、ウズベキスタンの博物館で保管されていた長さ約24センチ、高さ約13センチの上あごの化石に注目した。
旧ソ連の研究者が白亜紀後期の地層から発掘したもので、しわ模様やこぶのような隆起などの特徴から新属新種とわかった。
ほかの恐竜化石と比べることで、歯がナイフのように鋭い肉食恐竜カルカロドントサウルスの仲間だと突き止めた。
全長は7・5~8メートル、体重は1トン以上あったと推定される。ウズベキスタンで見つかった肉食恐竜では最大級という。
研究チームは、この地域を15世紀に統治していたティムール王朝の君主で数学者・天文学者でもあったウルグ・ベグの名前にちなんで、学名を「Ulughbegsaurus uzbekistanensis(ウルグベグサウルス・ウズベキスタネンシス)」と名付けた。「ウズベキスタンのウルグ・ベグのトカゲ」といった意味だ。
カルカロドントサウルスの仲間は、最大で全長約13メートルに達したと考えられている。
白亜紀末期までに北半球から姿を消し、ティラノサウルスの仲間が入れ替わるように巨大化したと考えられる。
ただ、いつ両者の「覇権交代」があったのかはよくわかっていない。
ウズベキスタンの同じ時代の地層からは、小型で原始的なティラノサウルスの仲間「ティムレンギア」の化石も見つかっている。体長3~4メートル、体重約170キロほどの肉食恐竜だ。
大型のカルカロドントサウルスと、小型のティラノサウルスのそれぞれの仲間が同じ地層で見つかったのはアジアでは初めて。
今回の発見で、カルカロドントサウルスの仲間が、少なくとも白亜紀後期の9千万年前ごろまでは中央アジアで繁栄していたことになる。
研究チームの田中康平・筑波大助教は「恐竜の移動や拡散を考えるうえでも重要な発見だ」と話す。