アメリカでは多くの労働者が暴力、バーンアウト(燃え尽き症候群)、ハラスメントから逃れるため、別の業種へと移っているそうです。
こうした動きが増えているのは、給料のいい、ハラスメントのない、時間給制の仕事がないからだと、専門家は指摘しています。
実際に業種を移った人たちは、どんな仕事にも苦労はつきものですが、自分たちのメンタルヘルスにとって悪くない仕事を選んだと話しています。
元客室乗務員のジェイダ・マグウッドさんは、新型コロナウイルスのパンデミックの最中、乗客から何度も言葉による攻撃を受けたことを思い起こしていました。酒に酔い、暴力を振るった客を警察官が飛行機から連行したこともあったとのこと。
マグウッドさんは最近、旅行業界を去り、テック系のスタートアップの仕事に就いたんだとか。以前から辞めようと思っていたわけではない。ただ、乗客からの暴力に疲弊し、客との直接のやりとりがあまりない仕事を探すようになったのです。
店員や看護師と同じく、客室乗務員もこの1年あまり、客の粗暴な、時に暴力的な振る舞いに耐えてきました。アメリカでは、マスクの着用義務に激しく抵抗したり、パンデミックのトラウマから暴言を吐くなどする人々もいたと、専門家や労働者は話しています。
こうした中、今よりも良い仕事を求めて業種を移る人々が増えているようです。2021年4月のプルデンシャル・ファイナンシャルの調査では、回答者の5人に1人がパンデミックの最中に転職していて、26%が新型コロナの脅威が収まったら新たな仕事を探すつもりでいることが分かりました。
「コロナ禍で(暴力は)航空会社にとって自分たちは消耗品なんだという感覚を強めました」とマグウッドさんは語っていました。
「最終的に、こんな状況に対処するほどの十分な給料はもらっていないという結論に至りました」
何カ月も暴力に耐えてきた多くの最前線で働く人々は、今の仕事よりもマシな仕事を見つけようと必死です。ただ、そういった仕事には、彼らがあまり経験したことのない別の問題が付いてきます。苦境に立つ飲食店の従業員は商品管理倉庫で働きたいと考え、疲れた商品管理倉庫の従業員は小売店で働きたいと希望します。疲労困憊の小売店の従業員は、看護学校に入ろうかと考えるといったように、です。
バーンアウトする人の多さや長時間労働から、マグウッドさんはテック系スタートアップで働くのは容易じゃないだろうと分かっていたといいます。ただ、現在務めている会社にはメンタルヘルス休暇の制度があり、永続的な在宅勤務も可能で、何カ月も手に負えない旅行者を相手にしてきたマグウッドさんにとっては、どちらも喜ばしい変化のようです。
「トイレの列にでも並ばない限り、客室乗務員には10分の休憩を取る余裕はありません」とマグウッドさんは語っていたそうです。