大人気RPGゲーム「FINAL FANTASY XV」に実装された人工知能を取り上げた論文が、2020年度人工知能学会論文賞を受賞しました。
論文の著者はスクウェア・エニックスに在籍する三宅陽一郎さん。論文名は「大規模デジタルゲームにおける人工知能の一般的体系と実装 -FINAL FANTASY XVの実例を基に-」だそうです。
論文全文はJ-STAGEにて無料で読むことが出来ます。
「FINAL FANTASY XV(ファイナルファンタジー15)」は人気RPG「FINAL FANTASY」シリーズのナンバリングタイトル15作目の作品です。
「FINAL FANTASY XV」は魔物や魔法が存在するファンタジーの世界観でありながら、「結婚する親友のために男友達が集まって独身最後の旅行をする」という身近な題材を取り上げることで、非現実の中にある現実的な青臭さ・泥臭さを表現した名作です。
この一風変わったテーマは、従来の「世界の命運を背負って立つ主人公と仲間たち」「巨悪を打ち滅ぼす物語」という横道なバトルファンタジーものからは良くも悪くも一線を画すことになりました。
そして、「男所帯のロードムービー」であるからこそ、キャンプやドライブ、サバイバル料理と言った「男のロマン」要素にもこだわったゲームでした。
三宅陽一郎さん著「大規模デジタルゲームにおける人工知能の一般的体系と実装 -FINAL FANTASY XVの実例を基に-」はゲーム開発の場において、人工知能(AI)技術がどのように活用されているかをわかりやすくまとめた論文です。
網羅的かつ体系的に人工知能の利用実態についてまとめたことで、ゲームに馴染みの薄い読者にも伝わりやすい内容となっています。論文の審査をする人工知能学会は人工知能のプロであってもゲーム開発のプロではないので、そこを踏まえて論文を書いたのはさすがといったところでしょう。
また、理論的な観点のみではなく、実際にゲームに実装した際の経験を踏まえた「実践的」「実用的」な論文であることも評価されたようです。
これから人工知能×ゲームの可能性がどんどん広がっていく中で、本論文は「ゲーム業界の記念碑的論文」になると高く評価されました。
三宅さんは受賞にあたり以下のコメントを発表しています。
「『デジタルゲームにおけるAI技術』は、ゲーム産業における開発と、大学における研究を中心に、この20年で急速に発展した分野です。この新しい分野において、当社が積み上げてきたAI技術の研究成果を、人工知能学会様より高くご評価いただき、深く感謝しております。今後も、日本の産学における本分野の発展および連携の推進のために、より一層尽力してまいります。」