今年の5月12日、例年より早めに梅雨入りした福岡県で数万匹のヒキガエルが一斉に山登りを始めました。
宝満山で見られるこのカエルの大登山は、専門家も首をかしげる珍しい行動のようです。
福岡県太宰府市と筑紫野市にまたがる「宝満山」の池では、毎年岸辺が埋め尽くされるほどのオタマジャクシが生まれます。池の中でオタマジャクシから子カエルに変態すると、彼らは小さな体で一生懸命「登山」を始めるのです。
まだ成長しきっていない子ヒキガエルは体長1センチ以下。池の岸辺から登山道に出るのも一苦労です。しかし、彼らはなぜか池から山頂までの600メートル以上の距離を登っていきます。この過酷な登山は約40日かかります。
登山道が整備されているとはいえ、山頂を目指す数万匹全部が無事に目的地にたどり着くのは至難の業です。地元メンバーで作られた「宝満山ヒキガエルを守る会」は、そんな小さなカエルたちの旅路を手助けしています。
会のメンバーは側溝に落ちてしまった子カエルに葉っぱの橋をかけてあげたり、登山客にカエルを踏みつぶさないよう注意喚起したりと間接的に子カエルを援助しているそうです。
このヒキガエルたちの登山は「宝満山」以外では見られません。毎年起こる現象なのですが、理由はいまだに不明のままです。
専門家の仮説も様々なものがあります。
一体なにが小さなカエルたちを駆り立てるのか、今後の研究が待たれますね。
ソーシャルディスタンスが奨励され、一人で気分転換ができる登山・ハイキングが注目されている中、「登山カエル」の身を案じる人も多くいます。
元々宝満山は登山道がしっかり整備されており、麓のほうは車道もあるため初心者には登りやすい山です。そのため事情を知らない新規登山客にカエルが踏みつぶされてしまうのではないかと懸念されているのです。
道が整備されているとはいえ、宝満山はそれなりにハードな登り道。加えて1センチ以下の子カエルはよく見ないと気付かないほど小さな生き物です。初心者の登山客に「気を付けて」と言ってもなかなか厳しいものがあるでしょう。
守る会メンバーや各団体は「宝満山の登山カエル」の存在を知り、踏みつぶさないように気を付けてほしいと声をかけています。人間もカエルも安全に登山ができる環境になるといいですね。