求人情報を分析している民間会社フロッグによると、神奈川県内の今年7月の求人数は、正社員ではコロナ禍前の2019年7月を上回りました。一方、アルバイト・パートでは2年前の3分の2にとどまり、回復の遅れが目立ちます。コロナ禍で、パートやアルバイトの新規雇用が低迷しているようです。
同社は求人媒体に出稿された情報を独自に集計、分析している。「正社員」と「アルバイト・パート」、それぞれ5媒体が、各月最終月曜日時点で掲載していた情報を対象としました。
県内での正社員の求人は、19年7月は5338件でした。これを100とすると、20年7月は81に減少。しかし、21年7月は124と、コロナ禍前を上回りました。
一方で、アルバイト・パートでは19年7月の7万4720件を100とした場合、20年7月は72、21年7月は64と、悪化が続いています。全国でみると、20年7月の64から21年7月は73と回復してきている様子。
アルバイト・パートの求人を業種別でみると、21年7月の求人は、19年7月を100とすると、「飲食/フード」で47、「販売/接客/サービス」で57と、落ち込みが目立ちます。ただし、全体の15%近くを占める「医療/医薬/福祉」では、135と高いという結果になりました。
フロッグの菊池健生社長は「日本では不況になると求人はアルバイト、パートから無くなっていく。加えて、神奈川県のように飲食業に影響が大きい緊急事態宣言などの期間が長い地域ほど、回復が遅い」と指摘しています。
「飲食、休業・時短期間が長い地域は求人戻らず」
長引くコロナ禍は雇用にどのような影響を与えているのでしょうか。フロッグの菊池健生社長にお聞きしました。
――アルバイトやパートなどの求人が低迷しています
「管理職層や年収帯が高い層の求人は、それほど減っていない。経験者採用などは、ずっと前年を上回って推移している。アルバイトやパートなど、給与が低いところから求人がなくなるのは日本の特徴だ。「管理職はほかでもやっていけるでしょ」という米国などと比べ、日本では正社員はくびにできない。いまだに非正社員が雇用の調整弁となっている。 」
――コロナ禍で、飲食などの業績に影響が大きいこともあるのでしょうか
「飲食業界はアルバイトやパートがメインで、もともと求人数も多い。緊急事態宣言などで休業や時短営業の期間が長い地域ほど、求人は戻っていない。神奈川県が全国と比べて低迷している理由でもある。」
――コロナ禍前、人手不足もあり、非正社員の待遇が改善していました
「求人が減っても給与が下がることはあまりない。コロナ禍が収束すれば、再び人手不足になることを経営者は意識している。一方で休業を続け、業績が悪化した企業には、最低賃金の引き上げへの対応も打撃になる。勝ち組と負け組がはっきりしていくだろう。」
――神奈川県の特徴はありますか
「製造業の回復が特に顕著だ。飲食などの戻りに時間がかかる中では、製造業が雇用を牽引(けんいん)していくことになるだろう。」(大平要)