「全員、好きでした」言葉巧みに次々交際　結婚詐欺師の哀れな末路

3人の女性に結婚を持ち掛けるなどして金品をだまし取ったとして、詐欺罪などに問われた福岡市東区の無職の男（51）に対し、福岡地裁は21日、懲役5年6月（求刑懲役7年）を言い渡しました。被害額は立件分だけで約700万円。被告は6年ほどの間に10人以上の女性から1億円に上る金品を受け取ったとみられています。「結婚後のお金をためよう」。甘い言葉を巧みに使い、外国為替証拠金取引（FX）に「投資する」と説明して受け取った金は、ボートレース（競艇）につぎ込み、水泡に帰しました。　（吉田真紀、小笠原麻結）

6年間で騙した女性は10人以上で、被害者の中にはシングルマザーも。トータル約1億円を騙し取っていた様子。

「全員、好きでした」 　

17日、福岡拘置所（福岡市）の面会室で、記者の接見に応じた被告は、きっぱりと言った。「イケメン」とは思えませんが、ふくよかで気さくそうな雰囲気は「マイホームパパ」のよう。女性から受け取ったのは「6年間で1億円あるかないか。人数は正直、分からないけど10人以上」と打ち明けました。 

判決などによると、被告は2017年9月～19年3月に婚活サイトや婚活パーティーで知り合った3人から計約700万円をだまし取るなどしたとのこと。当時被告は別の女性と結婚していましたが、シングルマザーだった被害女性には出会ったその日に交際を申し込んだそう。その後知り合った別の女性とは、両親との顔合わせまで済ませていたといいます。

被告や弁護人によると、大学卒業後、会社員を経て30代半ばで中古車販売会社を起業し、数人の従業員を雇っていたのだとか。「経営資金のために」と競艇を始めた直後、“大穴”を当てて30万円の元手が400万円に増えたことがあったといいます。 

過去にも結婚をほのめかして女性から現金を詐取したなどとして、詐欺罪などで2度実刑判決を受けています。その際、「ギャンブルはしない」と誓ったといいますが。。。 

被告は服役後、婚活パーティーにのめり込んだ様子。17年には別の女性と結婚していた時期があるにもかかわらず、年間100回以上も参加。出会った直後の女性にも「僕たちはもう恋人同士」「ずっとそばにいるよ」などと甘い言葉を掛けて交際や同棲関係を結ぶ一方、金を要求したり、クレジットカードを盗んで勝手に金を引き出したりしていたといいます。 　

依存症患者を支援する「依存症回復支援センターエール」（福岡市）の岡田昌之支援員（60）は公判を傍聴してきました。「生活の中で競艇が最優先となっており、診断を受ければ依存症と判断されるだろう。本来は服役中から治療を受ける必要がある」と指摘し、服役後には被告を支援する考えを示しました。 　

弁護人は今回の公判で「（経緯に）不自然な事情が多数存在する」として、被告に発達障害がある可能性を指摘し、鑑定を求めましたが、裁判所は却下しました。 　

被告は金を投資せず、競艇につぎ込み、「損失は8千万円以上だが、すべてが女性のお金ではない」と説明しました。接見の最後に、被害者への思いを聞くと、「信用して預けてくれたお金を競艇に使って申し訳ない」と反省を口にしたそうです。