10月から食品などの値上げの動きが一段と広がる。世界的な原材料価格の高騰や中国の景気回復などが要因だそうです。相次ぐ値上げで家計の負担が重くなり、政府の緊急事態宣言の解除で正常化に向かう国内経済に水を差すおそれがあります。
雪印メグミルクや明治は、マーガリンなどの家庭用商品を10月1日出荷分から値上げするとのこと。雪印の「ネオソフト」(160グラム)の希望小売価格は税込みで16円ほど上がる見通しです。
食品スーパー「アキダイ関町本店」(東京都練馬区)では、店舗や取引先の卸業者に一定の在庫があり、すぐに価格を上げる予定はないのだとか。ただ、アキダイの秋葉弘道社長(53)は「値上げはしたくないが、仕入れ値が上がれば価格に転嫁せざるを得なくなる」と話しています。
マーガリンの値上げは、大豆や菜種の産地である北米の天候不順や、中国など世界的な需要増による油脂価格の高騰が要因です。楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストによると、大豆の9月の国際取引価格は前年同月比で1・3倍、菜種は1・7倍に上昇しました。
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値上げは外食にも及びます。牛丼チェーン「松屋」を展開する松屋フーズは9月28日、「牛めし」(並盛り)を税込み320円(沖縄は290円)から全国一律で380円としました。輸入牛肉の価格高騰などを受け、3年半ぶりの値上げとなったとのことです。
吉野家ホールディングス(HD)や「すき家」のゼンショーHDは現時点で値上げに慎重ですが、「牛肉の高値が長期化すれば価格への影響も避けられない」(吉野家HD)といいます。
野菜もさらに値上がりしそうです。農林水産省は9月29日、主な野菜14品目の10月の価格見通し(卸値ベース)を発表しました。北海道の7月の記録的な猛暑と少雨の影響で、ジャガイモとタマネギは10月を通して平年より2割以上高くなる見込み。ハクサイやレタス、ナスも、9月前半の長雨などで生育が遅れ、10月前半は高値で推移するとみられます。
客離れを防ぐため、値段を変えずに商品の内容を変える「実質値上げ」の動きも出始めた様子。
クリスマスの繁忙期に向け、人気ホテルやレストランなどが手がける40種類以上のケーキの予約受け付けを始める百貨店の松屋銀座(東京都中央区)。
「昨年から値段を変更したブランドはないが、使用するイチゴなどの果物をこれまでより安い価格のものに変更したり、デザインをシンプルにしたりして工夫する例が目立つ」(洋菓子の担当者)といいます。
第一生命経済研究所の新家義貴・主席エコノミストは「所得がなかなか増えない中で食費などの支出が増えるため、今回の値上げは増税のようなものだ。生活防衛の意識が高まり、緊急事態宣言解除後のレジャーや外食の伸びを抑えるのではないか」と指摘しています。