結果、生産性の低下は見られず、幸福度が向上したとのこと。
アイスランドの研究者らは4日、アイスランドで2015年から2019年にかけて2回実施された「週休3日制」トライアルについて、「圧倒的な成功」「他の国の政府にとっても参考になるだろう」と評価している。
このトライアルでは労働者の勤務時間が短縮された一方で、これまでと同額の給与が支払われた。
研究者によると大多数の職場で生産性が維持、もしくは向上したという。
この実験は、アイスランドは北欧諸国の中でもワークライフバランスの面で遅れていると主張する市民社会団体や労働組合の働きかけを受け、首都のレイキャビク市議会と政府が行った。
最終的に2500人以上(同国の労働人口の約1%相当)の人々が参加した。
第1回目は、2014年から2019年まで、レイキャビク市で実施され、当初は保育所やサービスセンターの職員の労働時間を週40時間から35時間に短縮した。
その後、対象は市長室やケアハウスのスタッフにまで拡大された。
第2回目は、2017年から2021年にかけて実施され、複数の政府機関に所属する440人の公務員が労働時間を短縮した。
参加者は、朝9時から夕方5時までの職員と、不規則なシフトの職員の両方を含んでいた。
このトライアルの成功をきっかけに、労働組合は労働パターンの再交渉を行うようになり、現在ではアイスランドの労働者の86%がこれまでと同額の給与の支払いを受けつつ時短勤務に移行、あるいはそうなる予定だという。
この結果、「ワークライフバランスの改善」、「従業員のパフォーマンスの向上」、「環境保護のための改善策」として推進されている大幅な賃金カットのない「週休3日制」のコンセプトに信憑性を与えている。
労働時間の短縮は非生産的で、かえって労働時間を長くしてしまうのではないかという指摘もあったようだ。
しかし、今回の分析によると全体としては生産性や提供されるサービスの質の低下は見られなかった。
実際には、会議の時間を減らし、スケジュールを再編成し、部門間のコミュニケーションを改善することで、各チームはより効率的に働くようになったとのこと。
また、従業員の福利厚生も改善された。
新体制で働いた結果、多くの従業員は、職場でのストレスの低下、燃え尽き症候群の減少が見られ、仕事に前向きになり、幸せを感じるようになったと話している。
参加者によると、勤務時間が短縮されたことでエクササイズや社交に費やす時間が増え、場合によってはそれが仕事の成果によい影響を与えたケースもあったという。
幸福度に顕著な改善が見られなかった職場でも、顕著な減少傾向は見られなかった。
労働者からは、ストレスや燃え尽き症候群のリスクが減ったと感じるようになり、健康やワークライフバランスが改善されたとの報告があがった。
英シンクタンク「Autonomy」の調査ディレクター、ウィル・ストロンジ氏は、「この研究は、公共部門における世界最大規模の労働時間短縮トライアルが、あらゆる面で圧倒的な成功を収めたことを示している」と述べた。
アイスランドの「Association for Sustainable Democracy」の研究員、グドムンドゥル・D・ハラルドソン氏は、「アイスランドでの労働時間短縮の試みは、現代において労働時間を短くすることが可能であるだけでなく、進歩的な変化を取り入れることも可能であると教えてくれている」と述べた。
こうしたトライアルは、スペインやニュージーランド、イギリスなど世界各地でも実施されている。
イギリスのニュースサイト「ガーディアン(The Guardian)」によると、2021年5月、スペイン政府は3年間の試験運用計画を承認し、計画を実施する企業の支援に5000万ユーロ(約66億円)を拠出することを約束した。
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)首相も、新型コロナウイルスのパンデミックから経済を回復させる手段として、この構想を強調している。
また、スペインでは新型コロナウイルスの影響もあり、企業の週休3日制を試験的に導入していて、ニュージーランドでは、食品・日用品大手ユニリーバが、給与は据え置きで労働時間を20%削減する取り組みを試験的に行っている。
英プラットフォーム・ロンドンの週4日勤務キャンペーンに関する5月の報告書は、労働時間を短縮することでイギリスの二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる可能性を示唆し