「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」
2年前、結婚情報誌ゼクシィのこんな広告のキャッチコピーが話題を集めた。
かつては、誰もが結婚するのは当たり前と思われていた時代。
だが、いまや結婚は“選択肢の一つ”にすぎない。
※本稿は「FORBESJAPAN」、文=井土亜梨沙氏が書いたものを編集・抜粋しています。
2018年の婚姻率は、人口を1000人あたりで結婚した人の数は4.7人で、平成25年からは6年連続で減少。
最高の婚姻率を記録している1947年の12人と比べると、半分以下だ。
そもそも結婚なんて必要ないのではないか、と考える人も増えているようだ。
そして、とある調査では、働く女性の7割以上が「結婚は不要」と答えている。
その調査とは、毎週、政治、教育、健康など多様なテーマで議論をしているイー・ウーマンサイトの「働く人の円卓会議」で行われたもの。
議長をつとめたのは、『結婚不要社会』を執筆した山田昌弘中央大学教授。
4日間に分けたオンライン会議では、400名以上が参加し、70%を超える人が結婚を「不要」だと答えた。
・「結婚」と「永遠のパートナー」は別のものでは。自分はたまたま永遠のパートナーに出会い、たまたま結婚という形を選んだだけであって、結婚するしないにかかわらず2人が幸せになれる選択肢が、世の中にもっとあるといいと思っています。
・結婚して子どもを持ち、数年で離婚して子育てを終えた今、結婚は必須でなかったと思いますし、今後も結婚したいとは思ってません。
・パートナーは必要だと思いますが、結婚という形を取る必要はないと思う。むしろ結婚していなくてもパートナーでいられる関係の方が結びつきが強い気がする。
・仕事を持っていると、苗字が変わることは手続きが面倒ですし、子どももいませんので戸籍にこだわる必要もない。家族もまわりの友人たちからもパートナーと理解してもらえているので、あえて婚姻の必要もないです。
・事実婚を経験し、子どもの出産の際に入籍しました。仕事ではそのまま旧姓を使っていますが、公的書類や銀行口座は夫の姓を使わねなければならず、不便さを感じています。結婚制度には姓に縛りがあるため、ずっとNOと考えていました。しかし、昨今、突然の入院生活を経験し、入院手続きや保証人など、この時は、パートナーがいて良かったと安堵しました。事故などで収入を断たれることもあるかもしれません。リスク回避には、結婚制度に乗らないまでも、家族という生計を共にするパートナーは必要と痛感しています。
・結婚という形を取らず子どもを一人持ちました。何も困ることはありません。
一方で、結婚は「必要」と答える人も一定数いるようだ。
・大人のカップルが二人で生活していくうえでは、結婚という形は必ずしも必要ではないと思います。しかし、子どもの教育面や、福祉や介護といった二人だけで解決できない課題を抱えた場合には、結婚という形に乗った方が、今の日本では特に精神的に楽だと感じます。まだまだ非婚カップルに対する偏見は日本では強くあると思うからです。
・私には感情面で結婚は必要だったのだろう。
・離婚もできるという意味では、結婚は永遠の結びつきではないかもしれませんが、人生経験のひとつとして縁があれば必要なのではと考えます。
・この人と家族になるという覚悟をするには良いきっかけになるかと思います。
先の議会で議長を務めた山田昌弘中央大学教授は、これらの結果に対して、以下のようにコメントした。
「一番大切なのは、二人の関係をどうするかですが、それに制度としての結婚が絡んできます。私は、制度としての結婚が窮屈だから、パートナーもいない人が増えているかもしれないと考えています。また、日本ではセックスレスが浸透するなど、とても永遠の結びつきとは思えない夫婦も増えています。では、パートナーがいない人、そして結婚しても信頼関係がない人たちは、どのようにして人との絆を作り出しているのか、興味があります」
また、サイトを運営するイー・ウーマンの佐々木かをり代表取締役社長はForbes JAPAN編集部の取材に対して次のように答えた。
「働く女性たちにとっては、特に40歳を過ぎた頃から、「結婚」について改めて考える機会が多くなってくるように思います。結婚している人にとっては、仕事に責任を持ち、収入もあり、子どもも育て、家事もするというマルチタスクで人生を追求する女性たちと、仕事だけしかしないパートナーとの意識や価値観、そして行動力のギャップが広がるのもこの時期なのです。また、結婚していない人にとっては、どんな人生の形があるのかをじっくり考え始める時期でもあります。
同時に、結婚という制度が今の社会のライフスタイルに合っていないということも重要な論点です。
日本特有の課題として、選択制であっても夫婦別姓が認められていないこと、世帯単位で社会制度が作られていること、税も年金もパートナーに稼ぎがない方が働き手に有利な法律になっていることなど、働く人同士がパートナーとして暮らすことに逆行した構造になっていることが大きな課題です。
働く女性と結婚は、私自身とても関心のあるテーマです。考え方は人それぞれで良いし、パートナーとの関係や、子どもの有無や状況などで変化もすることだと思いますが、制度改革は必要。働く女性たちとパートナーのあり方からの法律改正の提案はこれからも積極的にまとめていきたいです」と述べた。
結婚が必要であると答えている人も、不要であると答えている人も、現状の婚姻制度が時代に即していないという点では意見が一致していた。
もしこのまま社会制度が改革されなければ、ますます結婚は「不要」とされ、婚姻率は下がる一方だろう。
結婚=出産では決してないが、結婚していた方が制度上子供を産みやすい社会であるならば、少子化対策の一環としても、より時代にあった制度づくりが求められているはずだ。