敏感、繊細、共感しやすいなどが特徴の性格の持ち主、いわゆる“繊細さん”のことを心理学的にはHSP(Highly Sensitive Person:ハイリー センシティブ パーソン)と呼んでいます。
HSPを自認している田村淳さんと、精神科医・渡邊真也先生がその特徴、長所と短所、向き合い方などについて掘り下げるスペシャル対談が実現。
正しい理解を広めたいという二人のメッセージも合わせてお届けします。
[本記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開したものを一部編集・抜粋しています。]
・田村淳さん
田村 淳(タレント)
1973年12月4日生まれ、山口県出身。O型。1993年、田村 亮と共にお笑いコンビ・「ロンドンブーツ1号2号」を結成。コンビとして活躍する一方、安定した司会ぶりが高い評価を得ており、個人でも多くのバラエティ番組に出演。山口県立下関中央工業高校卒業。2019年、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修士課程に進学。2021年修了。
・渡邊真也先生
渡邊 真也(精神保健指定医)
大分大学医学部卒業。松阪市民病院で初期研修終了後、松阪厚生病院に勤務。「新宿メンタルクリニック アイランドタワー」勤務を経て、「新宿ストレスクリニック」統括院長に。徹底した問診重視スタイルで患者さんと向き合っている。
渡邊先生:田村さんご自身がHSP(Highly Sensitive Person=とても敏感な人)ではないかと思ったきっかけはなんでしたか?
田村さん:
『繊細さん』っていう本の著者の武田友紀さんと、話して気が付いたんです。
武田さんがHSPのことを説明されているのを聞いて、なんか僕に当てはまること多いなって思ったのがきっかけです。自分の人生を振り返っていくと、すっごいこまかいことを気にしてて……。それを潔癖症という言葉で片付けられていたんですね。僕がこまかいこと言うと、「わあ、潔癖だもんね」と言われてきたんです。僕は違うんだけど、周りからは潔癖症だと思われているんだなっていう認識でした。それを武田さんに相談したら、「あ、淳さんはもう完全にHSPですね」って。そうか、僕はHSPなんだとわかったら、すごく腑に落ちました。
田村さん「HSPなんだとわかったら、すごくラクになったんです」
渡邊先生:
HSPには主に4つの特徴があります。深く考えることができる、敏感に感じ取れる、感情反応が強く共感力が高い、かすかな刺激に反応することができる。1996年にアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱したもので、比較的新しい心理学概念です。5人に1人はHSPだと言われています。
田村さん:
5人に1人ってけっこう多いですよね。僕は、HSPのなかでも、HSS型だと思うんです。
渡邊先生:
HSS型(High Sensation Seeking)の方は、好奇心が非常に旺盛なんですね。人口の6%ぐらいいると言われています。HSPの方は、その繊細さゆえに、概ね内向的なタイプが多いんです。田村さんのようなHSS型のHSPの方は、新しい経験や情報を求めるのが好きで、刺激は欲しいけれど傷つきやすいという特徴があります。
田村さん:
なるほど、僕はレアケースということですね。実は僕、ADHD(注意欠如・多動性障害)かな? と思っていたときがあったんですね。気になることがあるとコントロールが効かなくて行動に起こしちゃうことがよくあって。けっこう当てはまるなと。でも、HSPと言われていろいろ調べてみて、さらにHSS型のHSPなんだとわかったら、すごくラクになったんです。なので、ADHDではないなと今は思っています。
渡邊先生:
そうですね。好奇心旺盛で活動的なのに繊細となると、確かにADHDと似ている感じもありますが、別物です。
田村さん:HSPは、病気ではないんですよね?
渡邊先生:
はい。HSPは気質であって病気ではありません。ただ、繊細なことが理由でしんどくなっているのにそのまま放置していると、うつ病とか、精神疾患につながるリスクもゼロではないです。
田村さん:
病気じゃないけど、HSPがきっかけで病気になっちゃう可能性があると……。
病気じゃないから、治る、治らないじゃないと思うんですが、自分自身がHSPを嫌がって脱却したい人にはどんな話をされますか?
渡邊先生:
個人的には、HSPはその方の大事な性格なので、ゴソッと入れ替えるようなことは良いと思わないんですね。ですので、「治しましょう」と言ったことは一度もないんです。美しい心を大事にしてくださいとお話します。
田村さん:
なるほど。HSPって、判断基準はあるんですか?
渡邊先生:
一概にこれ、というのは難しいですね。診察でも、一度話しただけではわからないこともあるので、数回通っていただくこともあります。
(略)
田村さん:
内に内にと閉じこもっちゃうと、つらくなっちゃいますよね。
渡邊先生:
そうですね。発散させないと、よくないですね。
田村さん:
「“あなたの周りの僕みたいなヤツでもHSPの可能性あるよ”ってことを知ってほしいですね」
ここでHSPが発動しちゃうんですけど、僕がHSPの代表みたいに広まるのはすごく心配です。僕がこの性質のことを全部わかっているわけではないし、HSP=田村淳というイメージを持たれるとHSPへの誤解が生まれそうだなと気になります。あんなにズケズケとモノを言えるヤツが繊細なわけないとか言われそうですけど、“あなたの周りの僕みたいなヤツでもHSPの可能性あるよ”ってことを知ってほしいですね。
渡邊先生:
本当にそうですね。HSPの人はこう扱うといいですよ、というのはよくなくて、相手がHSPでもADHDでも誰であってもその方の個性を大事に接していただきたいです。誰であっても差別はしないという前提が重要ですよね。
田村さん:
はい。みなさんに正しく認識してもらえると嬉しいですし、そのうえで、自分と違うなと思う相手が誰であっても偏見なく接してもらえたらと思います。
HSP診断 セルフチェック
当てはまるものに○を付けてください
Q1 周りの人の反応が気になる
はい・いいえ
Q2 小さな物音でもなかなか眠れないことがある
はい・いいえ
Q3 隣で誰かが叱られていると心が痛い
はい・いいえ
Q4 友人の悪気ない一言がなかなか頭から離れない
はい・いいえ
Q5 生活や環境が変わると、慣れるまでに時間がかかる
はい・いいえ
Q6 部屋にこもりたくなることがある
はい・いいえ
Q7 「気にしすぎじゃない?」と言われることがよくある
はい・いいえ
Q8 一つの事が気になると他の事が考えにくくなる
はい・いいえ
Q9 気になるとすぐメモをする
はい・いいえ
Q10 繊細で美しい心を持っている
はい・いいえ
結果
「はい」が0 ~ 3 個
⇒HSPの可能性は低い
「はい」が4 ~ 6 個
⇒HSPの可能性あり(中程度)
「はい」が7 ~ 10 個
⇒あなたはHSPです
HSPという気質をぜひ理解していただきたいです。
先生とお話して、HSPは病気ではなくて気質だということを改めて勉強させてもらいました。自分はもしかしたらHSPなのかなと思う方は、自己診断ができるチェックシートがあるので、そちらでチェックしてみてはいかがでしょうか。
仮に、そこで自分がHSPだとわかったとしても、マイナスにとらえるんじゃなくて、この気質を自分の人生にどうやってうまく活かそうかっていうプラスの発想を持ってもらいたいなと思います。
どうしてもプラスに転換できないっていう人は、専門家の方の意見を聞きに行くことが大切だと思います。
HSPの方も、HSPじゃない方も、HSPという気質をぜひ理解していただきたいです。
この記事をきっかけに、たくさんの人に、HSPを認識していただけたらなと思います。