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バターに小麦粉、コーヒーも…「食品の値上げが止まらない」本当の理由

バターに小麦粉、コーヒーも...「食品の値上げが止まらない」本当の理由

※本稿はmi-molletの加谷珪一氏による寄稿を一部編集・抜粋しています。

このところ、食品類の値上げが続々と発表されています。

原材料価格の高騰は以前から顕著となっていましたが、日本では、いわゆるステルス値上げ(価格は据え置き、内容量を減らすこと)が横行しており、あまり表面化していませんでした

しかしメーカー各社もステルス値上げはもはや限界に達しており、名目上の値上げを実施しないと利益を維持できなくなっています。

一方、私たちの給料はほとんど上がっていないどころかむしろ下がっているのですが、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

日本の食品の値上げが止まらない本当の理由

 雪印メグミルクは、バターやマーガリンなどの14品目について10月1日から値上げすると発表しました。商品によって上げ幅は様々ですが、最大で12%上昇する商品もあります。同じく明治もマーガリンなど9品目を10月1日に値上げします。

サラダ油なども値上げされています。日清オイリオグループ、J-オイルミルズなど各社は8月から食用油の値上げを実施しました。小麦粉の価格も上昇していることから、家庭用小麦粉やパスタの価格も上がっていますし、コーヒー各社も秋に20%の値上げを予定しています。

各社は、天候不順など値上げについての理由を説明していますが、額面通りには受け取らない方がよいでしょう。というのも、メーカー各社はあくまで商品を売る立場ですから、経済全体の状況についてコメントしたり、評価を加えるということは原則として行いません。自社の業務に関わるミクロな部分に限定して値上げの理由を説明していると思ってください。

では、なぜ多くの製品が値上がりしているのかというと、日本以外の諸外国が経済成長を続けており、継続的に物価が上がっていることが最大の原因です。天候不順がきっかけかとなった可能性はありますが、日本経済の低迷による買い負けが背景にあるのです。

さらに困ったことに、先進各国はワクチンの接種をほぼ済ませており、各企業はコロナ後の景気回復に備えて、資材を奪い合っている状況です。コロナ危機で生産力が落ちていたところに、景気回復期待で注文が殺到しているという状況ですから、価格は跳ね上がる一方です。

原油価格はここ1年で1.5倍に上昇しましたし、鉄鋼石の価格も約2倍に高騰しました。コットンは1.5倍、砂糖は1.4倍、小麦は1.5倍、コーヒー豆は1.4倍とあらゆる原材料が軒並み値上がりしています。

日本ではずっとデフレが続いていると喧伝されてきましたが、それは事実ではありません。

確かに日本経済が低迷しているため賃金が上がらず、国内消費に依存する業界は値下げを余儀なくされてきました。しかし、私たちが普段、手にしている商品の多くは輸入で成り立っていますから、輸入される商品の値段は着実に上がっています。輸入価格に引きずられる形で、日本全体の物価もわずかですが、上がり続けてきたというのが現実であり、日本全体の物価が下がったことはほとんどありません。

物価は下がってないのに誤った情報を喧伝する声が多い

首都圏における新築マンションの平均販売価格はすでに6000万円を突破しており、20年間で1.5倍にも値上がりしました。これも鉄筋など資材価格が上昇したことが原因であり、日本人の所得とはまったく無関係に価格が決まってしまいます。

物価が上がっているのにデフレ、デフレと言われ続けたのは、その方が政治的に好都合で得する人たちがいたからですが、事実とは異なる情報提供を行っても国民生活は改善しません。

日本人は皆、物価は下がっていると思い込まされてきましたから、企業が値上げを発表すると、すさまじいまでの批判が寄せられます。筆者は以前から「物価は下がっていない」と何度も記事などで指摘していましたが、組織的なものなのか、かなりの誹謗中傷を受けました

その結果、企業は原材料価格が大幅に上がっているにもかかわらず値上げを決断できず、苦肉の策として、価格を据え置き、内容量だけを減らすという、いわゆるステルス値上げを行ってきました。諸外国にも価格を据え置いて内容量を減らすというやり方は存在しますが、ここまで大規模かつ広範囲にステルス値上げが行われているのは日本だけです。

問題は今後の推移ですが、値上げの根本的な原因が日本と諸外国の経済格差にあるのだとすると、これが解消されない限り、給料は上がらず、値上げだけが続くという話になってしまいます。

日本は先進諸外国と比較するとワクチン接種で致命的な遅れが出ており、医療体制も著しく脆弱であることから、コロナ危機からの回復は相当、遅れることになりそうです。非常に言いにくいことですが、これが日本の現実といってよいでしょう。

変異株の動向など不確定要素はありますが、諸外国がこのままコロナから回復すれば、日本との格差はさらに大きくなってしまいます。日本でもワクチン接種の目処が付くまでの間、節約を続けるしか対策はなさそうです。