企業の採用面接やインターンシップでの「就活セクハラ」に悩む学生が少なくない様子。外見を否定されたり、私的な誘いをされたり。学生は立場が弱い上、社員と一対一で会えるマッチングアプリが普及したことも背景にあるようです。
「何でショートカットなの? 女らしくない」。今年2月に受けた東京の人材派遣企業のオンライン面接で、中堅の男性社員から高圧的に言われたという女子学生(21)は、驚いたそうです。勇気を出して「私はずっと短い髪が好きだし、自分の個性だと思います」と答えたとのこと。
すると、「あっそ。別にいいけど、就活では長い髪の一つ結びが常識でしょ」と説教モードに。どんなスーツを着ているか見たいから立ち上がってと求め、パンツスーツと分かると不快な表情に。納得いかなかったそうですが、最終面接はロングヘアのエクステンション(付け毛)で臨んだとのこと。2万円の美容院代は痛かったと言いますが、内定が欲しい気持ちが強く、スーツもスカートにしたようです。
後日、この会社から内定をもらったそうですが不信感が消えず、辞退することに。女性が働きやすいと評判のメーカーへ入社を決めたとのことです。
気になる企業の社員と知り合えるマッチングアプリを悪用するケースもあるようです。女子学生(22)は、アプリでとある企業の男性とつながりました。無料通信アプリ(LINE)の交換を求められ、すぐに「アイコンの写真かわいいね。飲みに行こうよ」「出張があるから案内して」と私的な誘いが届き始めたそうです。
このアプリを「出会い系サイト」代わりに使う人がいて、セクハラの温床になっているのは知っていたのだとか。しかしエントリーシートの添削や人事部への口利きをちらつかせてくる人がいて、断ったら選考に影響しないかと怖かったといいます。
悩んでいた昨年末、アプリで知り合った女子学生を乱暴したとして大手の社員が逮捕されました。怖くなって自身は利用をやめたとのことですが、「大企業に入りたくてリスクを承知で使う学生は少なくないはず。コロナ禍で、社員と直接会って助言してもらう機会はますます貴重になってますから」
2017~19年度に大学などを卒業した男女千人を対象にした厚生労働省の調査では、就活でセクハラ被害の経験があると答えたのは25・5%で4人に1人。
広島弁護士会の寺西環江(たまえ)弁護士は「被害は氷山の一角で、泣き寝入りするケースは少なくない」とみています。何がセクハラに当たるのか知らない学生も多く「大学側の啓発に加え、企業も相談窓口の設置など対策が必要」と強調しているそうです。