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コロナ後の食生活の変化 ネット事業急拡大、食品会社もスーパーも若年層に照準

ネットスーパー

※本稿は産経新聞の田村慶子氏による寄稿を一部編集・抜粋しています。

新型コロナウイルス禍による巣ごもり生活で内食・中食需要が高止まりするなか、食品メーカーが若年層の獲得に注力している。

宝酒造は家庭での調理機会が増えた若者向けにみりんや料理酒の新商品を、日本ハムは家飲み用のおつまみなど加工食品を投入。

食品スーパー大手のライフは子育て世帯などを取り込もうとネット通販事業を急拡大している。

縮小続く高齢者の胃袋 若年層の需要増

「コロナ禍はみりんや料理酒の良さを知ってもらう絶好のチャンス。これを機に少しでも商品シリーズの若返りを図りたい」

みりん、料理酒、紹興酒と主力の酒類調味料で新商品を8月末に売り出した宝酒造の担当者は、こう意気込んだ。同社はテレワークの浸透などを背景に、若年層の来店頻度が増えた食品スーパーを中心に商品展開を進めている。

酒類調味料を使ったことがない初心者を想定し発売したのは、手に取りやすく通常サイズの半分にした500ミリリットルの小中容量パック(300~540円、税別)。みりんは味わいの異なる黄麹(こうじ)、白麹と2種類の米麹を使い、従来品よりコクとうまみを高めた。容器には「生臭みを消す」などの調理効果や、レシピを参照できるQRコードも掲載した。

みりんや料理酒は、そもそも購買層の高齢化が進む代表的な調味料だ。「若い人にみりんや料理酒を使えば、こんな献立もおいしく作れると気づいてほしい」と担当者は話す。

人口減や、食が細くなりがちな高齢者の増加で「日本の胃袋」は縮小が続く半面、「外食できない分、家ではちょっとぜいたくな食事を」とのニーズはコロナ禍で広がりを見せており、同社は付加価値を高めるなどして若い世代にアピールする考えだ。

コロナ禍で家飲み需要も好調が続く。総務省の家計調査では2人以上世帯で、家飲み需要を示すとみられる酒類支出が前年同月を上回る水準で推移。今年3月以降は反動減で前年を下回るも、7月に再び前年同月を超えた。

こうした状況を背景に、キリンビールやアサヒビールは会員制家庭用ビールサーバー事業を拡大。サントリーもハンディ型のビールサーバーを売り出すなど、家庭で外飲み気分を楽しめる商品を打ち出している。

氷を入れて飲む夏用ワインなどに昨年から注力するサントリーは「食事中だけでなく食後にゆっくり飲むなど、家庭でワインを楽しむ若年層が増えている」と説明する。

コロナ禍における家飲みについて、ニッセイ基礎研究所は「家の中で過ごす時間が増えたことで気分転換を図り、非日常感を楽しもうと挑戦したことのなかった種類のアルコールを楽しむようになっているのかもしれない」と分析する。

家事疲れに半調理製品も

こうした中、日本ハムは「家飲みや内食需要は今後もしばらく続く」(担当者)とみて、「おつまみ系」や、野菜などを加え、火を通すだけで食べられる「半調理製品」などの加工食品を強化している。

おつまみ系は今年6月に投入した切り落としのスモークタンや、黒コショウで味付けした牛肉のハム(いずれも590円、税込み)に続き、9月にはワインと合うスモークチーズとサラミ、オリーブの3種を1パックに詰めたオードブル(471円、同)も売り出した。いずれもターゲットは20~30代の若年層を据えた。

半調理製品では野菜を入れて炒めるだけで本格的な酢豚や八宝菜が食べられる「中華名菜」シリーズで30~40代の獲得を目指しており、昨年、イメージタレントに人気アイドルグループを起用した。

日本ハムは「半調理製品を使ってもアレンジすれば手料理と考えるなど価値観が変化している」と指摘。巣ごもり生活で料理に一時期凝っていた人も、家事疲れから「手早くおいしい料理をしたい」という簡便化志向に傾いているという

ネット経由を強化する動きもあり

一方、スーパーはネットスーパー経由で若年層をさらに増やそうとしている

民間調査会社の楽天インサイト(東京)が全国の20~69歳の男女千人を対象に2月に実施した調査によると、新型コロナの拡大前と比べ、利用が増えた食品の購入場所で最多はネット通販だった。

性別・年代別では、ネット通販での購入が増えたと答えた人の割合は男性20代が52・4%、女性20代が56・4%、女性30代が54・4%と、全性別・世代の40・3%より10ポイント超上回っている。ネット経由で既存の店舗などから購入するネットスーパーで食品を買うことが増えたと答えた人も、全性別・世代の20・1%に対し、20代男性が34・5%と、やはり若い世代ほど多かった。

ネットでの購入需要が伸びるなか、食品スーパー「ライフ」を運営するライフコーポレーションは、ネットスーパーに加え、アマゾンジャパンと連携して生鮮品などを届ける2本柱で電子商取引(EC)事業を展開。令和2年度のEC事業の売上高は、前年比76・1%増の53億円に急拡大した。飲料や冷凍食品、酒類などが売れており「30~40代の子育て世代のユーザーが増えている」(広報担当者)という。

元年に東京都内7区に限定してスタートしたアマゾン経由の配送エリアは、約2年間で東京、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、京都府、兵庫県に広がった。平成23年から展開しているネットスーパー事業も対応店舗を増やし、現在計62店舗だ。一覧性を高めたスマートフォンなどの専用アプリも採用し買いやすさを追求。3年度は売上高100億円と倍増を計画している。